守護心得

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守護心得

 世話役定範(さだのり)の低くて重い声が板敷の大広間に響く。 「して、皆の者。『守護心得』は覚えてきたか?」  試すような定範に、理人がすかさず応じた。 「我ら守護はご当主様を御護りし、その任務の遂行を補佐するものなり」 武田理人(たけだりひと)の言葉に真田雪乃(さなだゆきの)が続く。 「瘴気が濃くなれば鬼裂(きれつ)が開き、鬼童(きどう)を呼び寄せる。鬼童に取り憑かれた人間は鬼となリ、災いを招く……」 「我らの任務は鬼童を倒し、鬼の出現を食い止めつつ、開いた鬼裂を神力(しんりき)にて塞ぐこと」  今川菜々花(いまがわななか)が緊張した面持ちで唱えれば、島津高良(しまづたから)は腰の祓刀に手を添えて続ける。 「ひとたび鬼となった者は、人に戻ることあたわず。鬼は人を襲い、襲われた者はまた鬼となる。それ故、我らは鬼を直ちに滅する」  そこへ伊達右京(だてうきょう)が勢いよく手を上げた。 「我ら隠密機動隊は独立権限を持ち、現世のいかなる機関からも干渉を受けない!」 「皆、よく学んで来たようだな」  定範は満足げに大きく頷いた。 「ではお館様、引き続き石棺守の召集を!」  定範に促された倭は再び大鏡に向かって真言を唱えはじめた。  鏡が白く濁ると、今度は中から二人の女性が現れた。
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