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結界の姫君
「命様って?」
首を傾げる右京に高良が説明する。
「命様とはこの本殿の結界を張っている姫君のことで、平時は石棺の中に封印されておられる。先程お会いした石棺守のお二人は、命様直属の侍女たちじゃ」
「いいよなぁ、命様ってロマンだよな。深窓の姫君って感じ? 俺の予想では絶対美人だと思うんだよね。ひと目拝んでみたい!」
理人が目を輝かせると、雪乃は理人をギロリと睨んだ。
「何がロマンよ! 命様はね、鬼が現世に現れたときのみ石棺から出ることが許されるのよ? 前回の厄災から数えておよそ200年もの間、たったお一人で石棺に封じられていらっしゃるの!」
「おおっ! 雪乃ちゃんは随分と真面目に本家の歴史を学んできたんだな」
「茶化さないで! 我ら守護はご当主様のみならず、結界の姫君をもお守りする存在。いわば姫様は我らの主君!」
「姫様が石棺よりお出ましになるということは、私達が鬼童を倒しきれずに鬼の出現を許してしまうってことになります……」
おずおずと菜々花が申し立てると雪乃は大きく頷いた。
「そう、姫様にお出まし頂く前に鬼裂を塞ぐことこそ我らの使命なのよ!」
「へいへい、雪乃姫様の仰せのままに!」
「ちょっとあなた! 守護選抜試験とおって来てるんでしょ? まじめにやりなさいよね!!」
雪乃は理人を軽くにらみつけた。
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