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初陣
「お館様!」
定範の呼び声には応えず倭は両手を大鏡に添えて神力を注いでいた。
「場所は北千住の住宅街。定範、住民避難の指揮を執れ。行くぞ、一体の鬼童も逃がすな」
「はっ!」
白い光を放つ大鏡へと飛び込んだ倭に、守護の5人は迷いなく続いた。
「これは……老人ホーム?」
菜々花は道端の大きな看板を見て呟いた。
昼の熱と夜の闇が混じり合う逢魔ヶ時。その四角い建物には不自然にどす黒い靄がかかっている。
「祓うぞ」
倭が腰の刀を引き抜くと、水滴の溢れるような刀身が夕日を浴びて光った。
ヒュンヒュンヒュンヒュン
祓刀に吸い寄せられるように、施設を覆っていた黒いモヤが突然鋭い刃となって倭に襲いかかる。
「当主様!!」
理人が飛び出し、倭に襲いかかる黒い刃を全て弾き返した。
黒い刃は欠け落ちると鬼童の姿になって薄闇の中へと飛び出していく。
「逃がすな、斬れ!」
倭の合図で守護たちは刀を翻し鬼童に斬りかかる。
「漁網!」
菜々花は神力で練った糸を編んだ半円状のドームを展開し、黒い靄ごと建物を包みこんだ。
「邪気の一番濃いところは……」
菜々花はドームの中にソナーを飛ばして鬼裂を探す。
「ありました! 印を立てます!」
菜々花が光の柱を打ち立てて道を示すと、理人・高良・雪乃が三角の陣を組み倭を囲んだまま黒い靄の中に突っ込んでいく。
理人らが道を開くために切り捨てた邪気から鬼童が飛び出すが、後方に構えた菜々花と右京が神力の矢で次々とこれを射落とす。
初対面とは思えぬ以心伝心の連携で、4人は建物の中へと押し入った。
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