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シャノンに見覚えなし
同窓会にて、怖いと同時に楽しいことと言えば。久しぶりに会う友人たちがどのような変貌を遂げているのか?ということである。
なんとも奇妙なわくわく感を抱いていたのはきっと僕だけではなかったはずだ。六年一組同窓会、本日貸し切り――そんな看板がかけられた居酒屋の暖簾をくぐると、“おっひさしぶりー!”と明るい声がした。
「来たってことは、お前も六年一組の元仲間つーことだべ?」
「あ、うんまあ……」
おいでおいで、と手招きしてくれた青年は派手な金髪をしていた。僕は彼をまじまじと見つめる。同窓会なのだから当然、彼も僕と同じ大学三年生の年齢であるはずだ。もちろん、大学に進学せずに就職している、なんて人もいるにはいるだろうが。
僕達はしばし互いに見つめ合う。これはあれだ、お互いが誰なのか当ててやろうというやつだ。
「最後に会ったのが小学校六年生の時だかんなあ、どうしても顔の記憶のはいまいちなんやが」
ふむ、と彼はまじまじと僕の顔を見て言った。
「ズバリ!お前は田中陵介だなっ!」
「えええええええええええ!?なんでわかったの?僕まだ、ほとんどなんも喋ってないのに!?」
「ふふふ、当たった当たった。いやあ、ほとんど勘みたいなもんやが、一つだけ覚えてたことがあるかんな」
彼はにやにやと笑って、僕のトートバッグを見つめた。そこには、大きなスヌーピーのキーホルダーがぶら下がっている。
「確かクラスに一人、スヌーピー男子がいたことを覚えていたのだ。筆箱もスヌーピー、キーホルダーもスヌーピー、消しゴムも給食袋もスヌーピーだったやつ!男でもスヌーピー好きな奴はいるが、UFOキャッチャーにでもありそうなでっかいスヌーピーのキーホルダーをぶらさげてる奴はお前くらいのもんだと思ったかんね!」
「すご、当たってる。ていうかうよく覚えてたねそんなこと。あの頃と違って眼鏡も外したのに」
「ふふふふ、おれの観察眼を馬鹿にするもんじゃねえべ!」
素晴らしいドヤ顔を決めてくれる青年。ならば次は僕の番だ。彼の顔をまじまじと観察する。
当たり前だが、小学校六年生の時に髪を金髪にしていたやつなんていない。ただ、その特徴的な垂れ目と――やや地方なまりの残った喋り方には覚えがあった。
「そういう君は、富士見日影だろ?野球少年だった」
「い!?」
まさか即答されると思っていなかったらしい。彼は目をまんまるにする。なんだかすっきりした気分で、僕は笑い声を上げたのだった。
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