優しく、時に嫉妬深い彼からの溢れる程の愛情

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「――もしもし」 『莉世、なかなか出ないから心配したよ。大丈夫か?』 「あ、うん、ごめんね⋯⋯実はさっき訪ねて来たのは⋯⋯彼だったの」 『彼氏が? そう、なんだ。それじゃあ俺、邪魔しちまったか。悪いな』 「そんな事⋯⋯わざわざ心配してくれてありがとう⋯⋯」  いざ電話に出ると、遊は先程のアポ無しの訪問者の事を気にしてくれて電話を掛けてきたと分かり、この話の流れで「もう連絡しないで」と告げるのは何だか気が引けてしまう。  なかなか私が本題を切り出さない事に苛立っている様子の雪蛍くんを前に、焦る気持ちが増していく。 (言わなきゃ⋯⋯)  一旦切りよく話が途切れたタイミングで私が本題に入ろうと口を開き掛けた次の瞬間、 『あのさ、莉世⋯⋯彼氏が来てるところでこんな事言うのも違うとは思うんだけど⋯⋯さっきの続き⋯⋯良い?』  遊が何やら意味深な言葉を投げ掛けてきた。 「う、うん⋯⋯何?」  そして、私が尋ね返すと―― 『俺さ、本当はまだ、莉世の事⋯⋯吹っ切れてねぇんだよ⋯⋯彼氏いるって聞いても⋯⋯その気持ちはやっぱり変わらねぇ⋯⋯ウザいよな⋯⋯ごめん。けど俺⋯⋯伝えるなら今しか無いって感じたから、言わせてもらう。莉世、俺はお前が好きだ。別れた事もずっと後悔してた。無理だって分かってるけど、可能性がゼロじゃないなら、俺との事、もう一度考えて欲しい』  遊は私への思いが断ち切れていない事、私に彼氏がいると知った上で、改めて告白してきたのだ。  好きだと言われて、嬉しくない訳じゃない。  当時、遊の事は本当に大好きだった。  だけど今は、それ以上に雪蛍くんの事が好きだから。 「――ごめん、遊の気持ちは⋯⋯嬉しい。私も遊の事は、本当に好きだったから。でも、今は彼の事しか考えられないの。彼が大切だから⋯⋯、だから、ごめん。それと、もう、連絡も取れない。さよなら⋯⋯」  私は遊への気持ちが無い事をハッキリと伝えると同時にもう連絡も取れない事を口にしてそのまま電話を切った。  これでいい。やっぱり元カレと連絡先なんて交換するんじゃ無かったと反省しながら雪蛍に視線を移すと、 「雪蛍⋯⋯くん?」  何故か雪蛍くんは悲しげな表情を浮かべながら私を見つめてきた。
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