31.それぞれの思い

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「ふふ。落ち込んでる…」  部屋の様子をモニターで見ていたラルフは一人ほくそ笑んだ。  部屋にこっそり取り付けたカメラから手元のパッド型の端末から部屋の様子を確認できるようになっている。よくあるペットの監視用のそれと同じだ。  そこには、ソファの上で悶々とする大和の姿が映っていた。すべて、計画通りだ。 「あと一押しって、とこかな?」  ラルフは意地悪く笑う。  ラルフがいるのは、控え室。撮影の合間の休憩時間だ。  この様子では思った通り、部屋を施錠する必要はないようだった。それでも、玄関だけは中からも暗証番号がないと開かないように設定してある。  もともと、大和を岳から引き離すために仕組んだことだった。  こんなに上手く行くとは思わなかったけど。  それには、多分にラルフの現恋人の協力があったからこそなのだが。  恋人は、ラルフの依頼に本人直々、直ぐに乗ってくれた。普段の彼なら、受けもしないお願いだろうに。  のうのうと岳だけを幸せを享受させるわけには行かない。  弟、慧斗が命を絶ったのは岳の所為ではない、そんな話は信じられなかった。  現に弟は岳と付き合いだしたと、自分に報告していたのだ。  しかし、その後別れ。  弟が命を絶ったのはそのすぐ後だった。どう考えても、岳との別れが影響しているとしか考えられない。  あれは岳がその事実から逃れるために、でっち上げた話だ。  ラルフは信じなかった。岳以外の男の存在など、ラルフは知らないし、聞かされてもいなかったのだから。  確かに、岳と付き合う前の慧斗は悩んではいる様ではあったが。 「弟と同じ苦しみを味わってもらわないとね…」  綺麗に整えられた爪でモニターを弾いた。 「ラルフ、休憩は終わりだ」  マネージャーがドアの向こうから声をかけてくる。 「今行く」  控室から返事を返し、端末をバッグへとしまった。
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