命の天秤

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「あぁ、残念。足りないね」 「足りない!? なんで…」 荊棘は桃色の炎の中を指さした。よく見ると水色の小さな炎が中で揺れ動いている。 ――そうか、麻里奈さんの腹の中の赤ん坊の分…。 途方に暮れた俺の顔を覗き込むように見て、荊棘は優しげな笑みを浮かべた。 「大丈夫。あの子から取っておいで」 「あの子…? アイナ?」 俺はすぐさま首を横に振った。 荊棘は俺を見て、くすくすと笑う。 「違うよ、命を取って来いとは言っていない。あの子の力…強い霊力があるだろう? それでいい。あの強さなら天秤にかけられるよ」 「良かった…」 俺は安堵の溜息をついた。 アイナの霊力は記憶削除と共に取ってしまおうと思っていたし、代わりとして差し出すのも抵抗はない。 明日はまた門崎家に行くことになっていた。 必ず霊力を手に入れて、麻里奈さんと赤ん坊を助けるんだ。 荊棘に見送られ、俺は薬局を後にした。
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