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「アイナ、お願いがあるんだ」
「……おねがい?」
「うん。ママを元気にする為にアイナの力を貸して欲しい」
アイナは手を止め、俺を見ると首を傾げた。
「アイナのチカラ?」
「そう、アイナは強い力を持っている。俺は…ダークヒーローとして、その力を貰ってアイナのママを助ける薬を作るんだ。言ってる事、分かるか?」
アイナはコクコクと頷くと、少し表情が明るくなった。
「じゃあ、こっち見て…」
俺がアイナの肩に手をかけると、アイナはまた首を傾げた。
「チカラなくなったら、なにかこまることある?」
「……いや、大丈夫。何も困る事ないよ」
俺とアイナは互いに目を合わせた。アイナは大人しく俺の目をじっと見つめる。
俺の瞳が茶色から紫に変わると、アイナの目が次第に閉じ始め、しっかりと瞼が下りた時、俺はアイナの霊力を受け取った。そして死神の俺を見た記憶も消えた――。
これでアイナにとって俺は、ダークヒーローではなくなった。
「おわり?」
目を開け、パチパチと瞬きをしたアイナが大きな瞳で見つめてくる。
「終わり。ありがとな、アイナ」
あんなに記憶を消したくていたのに、俺は喜ぶどころか気持ちが沈んでいくのを感じていた。
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