奇跡の薬、最後の仕事

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土曜日、紘一さんも自宅にいる日に「家事代行の件で伝えたい事がある」と予め連絡をして家へ向かった。 俺がいなくなる事をなるべく自然な形で伝えておきたかった。 チャイムを鳴らすと紘一さんがドアを開け、招き入れてくれた。アイナがリビングから顔を覗かせ、俺を見ると駆け寄ってきた。 「リンドー!」 以前より元気を取り戻したアイナにほっとする。麻里奈さんはやはり不調なのかリビングにはいなかった。 「あの…麻里奈さんが大変な時に申し訳ないんですが、家の事情で今の仕事を続けられなくなりまして…」 目の前に座る紘一さんは、少し驚いた表情を見せるもすぐに口元を緩めた。 「そうか、こちらは大丈夫だから、気にしないで。竜胆くんに会えなくなるのは寂しいけど…特に愛奈はね」 紘一さんはリビングの床でおもちゃを広げるアイナをちらりと見た。アイナはこちらの会話を聞いていないのか、ひとり黙々とプラスチックのブロックを組み立てている。 「それで、僕の知り合いに仕事を引き継ごうと思っています。もちろん、紘一さん達の方で別の業者に頼んで貰っても構いません。一応、彼の連絡先だけ渡しておきます」 俺は糸杉の連絡先を書いた紙を渡した。俺の勝手で彼に全てを任せていくのは申し訳なく思うが、優しい糸杉なら安心してアイナを頼めると思った。 「ありがとう。受け取っておくよ」
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