未来からの手紙

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未来からの手紙

将来に不安はありますか。 ありません。 そんな人間がいるかと言われればわからない。 だとしても、そう答える人間が好きだ。憧れる。未来を未来と捉える事が難しい自分には、眩しく光って映る。 --- 高校3年の六月、俺は一通の手紙を受け取った。 自称、未来の自分。7年後、25歳のおれからだった。信じるに足る要素はなかった。怪しいとか以前にありえない話だと思った。やけに可愛らしい便箋に謎が包まれていた。 「「こんにちは。7年前の俺。深いわけがあってこの手紙を送ることになった。未来からこの手紙を送ってる。なんとなく信じれなくてもお前ならなんとかすると思ってる。根拠なんかなくてもわかる。お前は俺で俺はお前だから。どんな時も自分は大好きだ。どう生きたって嫌いになんかなれやしない。ここからが本題だ。お前のクラスに未来がいるだろ。彼女も俺だし、俺も彼女だ。明日お前は、未来と隣の席になる。付き合え。なんとしても付き合え。人を好きになるとかくだらねぇと思うのも卒業しろ。頼む。俺は俺のために付き合ってくれ。そして結婚しろ。」」 白衣でもきてそうだな。厨二病すぎる。 「この前書いたやつの返事か?」 未来の自分に当てて書く手紙。授業の一環でそのような機会があった。 果たしてそんな事があり得るのだろうか。 手紙には、クラスメイトと添い遂げるよう書かれて終わっていた。 狭くて小さな自室の勉強机に座って、明日の席替えを夢想する。 思考をこの手紙に奪われる理由は、彼女である。 40数人が週5日、顔を突き合わせる厄介な空間が俺の世界の中心だった。 確かに明日席替えがある。 万が一未来と隣の席になったら、この手紙を信用するべきか。否か。 イタズラだとしても意図が掴めない。 クラスの人間が42人、男子の方が2人多いため 20人が女子と隣になる。 本当に隣なったとしたら。 ありえない話ではない。偶然起きる確率だって存在している。 手紙を撫でる手が気持ち悪かった。 考えるのは明日の席替えの後でも悪くない。 未来に期待して眠りについた。
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