○○未来

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○○未来

忘れる事を忘れるほど忘れられない。 俺は夢を見た。彼女との夢。未来の夢。 人の夢は終わらないとどっかの眠らない海賊は言っていた。 隣を同じ速度で歩く未来。 笑い方が似てくる結婚してから何十年の未来。 未来を選ぶことができるなら率先して未来を選ぶだろう。そんな輝かしい未来だった。 朝起きて、気落ちしている自分がいた。 高校3年の春、突如届いた手紙、イタズラだと決めつけた不気味な手紙。 あれから約一年。高校生というものから解き放たれようとしていた。 ○○未来とは、相変わらずの距離感にいた。 何人かのグループで遊びにいく程度。LINEやインスタでの繋がりはあるも、頻繁に連絡が行き交う事はない。名前で呼び合いはするが、意味もなく名前を呼び合う事はない。 友達としての未来は、最高だった。 優しい、かわいい、気がきく、みんなと友だち。 リーダー兼マドンナだった。 そんな彼女に恋心を抱く人間は少なくない。 この一年で6人、仲良しグループの中でも彼女に惹かれて、思いを告げる者もいた。 その度に、どこかもどかしい思いをしていた。 思いを告げられる彼女が、その思いを受け取るのではないか。受け取る事を許していいのか。 全てをあの手紙のせいだと思う事はできなかった。 卒業式。 今日で毎日のように顔を合わせることはなくなる。 同窓会で出会ったのなら、いつもの笑顔の彼女に目を奪われるだろう。 道でばったり出会ったのなら、彼女は今までと変わらずに接してくれるだろう。 嫌だった。そんな未来は嫌だった。 道であったらそのまま同じ家に帰りたい。 同窓会には同じ苗字で出席してクラス中から羨ましがられたい。 そんな日の朝だった。その気持ちを後押しするように見覚えのある可愛らしい便箋に包まれた手紙が届いた。 「「久しぶりだな。一年か。楽しかったか。俺はすごい楽しかった記憶がある。未来と過ごしたのはその一年が最初だからな。戻りたいと何度も思った。でも、お前のことだから告ったりしてないよな。わかるよ。俺もできなかった。でも未来が好きなことはわかる。席も隣にならなかったはずだ。10回近くあった席替えで近くなったのは一回だけ。斜め前に未来がいたあの九月だけだ。今日は卒業式だろ。最後の機会だ。タイミングを作る。お前のためでもある。告白しろ。俺の幸せを願っている。またな。」」 一年ぶりに未来から手紙が届いた。一年振りでも奇妙な手紙は変わらなかった。差出人不明。 席に関しては、真実だった。 クラスの人間か。 学校の人間か。 しかし、前の手紙で隣になると言ったのはなぜだ。意図が読めない。 明らかに困惑しながら卒業式に向かった。
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