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春の訪れ
ひどく目立った卒業式が終わり誰とも遊ばずスマホを放置して、抜け殻のような春休みを過ごしていた俺は、それを知る事がなかった。友達から連絡が来てもおかしくなかったが、何故か誰からも誘いの連絡は来なかった。あんな告白をしたんだ。来なくても不思議ではない。
あの後の卒業式はほとんど覚えていない。
渾身の告白は担任の何としても続けるという意思により返事を聞くこともなかった。
卒業するというのに、友達には揶揄われ、教師には最後まで叱られることとなった。
親が来ていなかったことが唯一の救いだった。
未来も戸惑ったように見えた。未来から話しかけてくることもなかった。
いつもより口数を減らして卒業していった。
桜が春の訪れを感じさせようと気合いを見せ始めた頃、部屋に引きこもり音楽に身を興じていた。
歌は好きだったが、音に包まれる安心感に浸りたかっただけなのかもしれない。
そんな頃だった、母親が戸惑った表情を顔に貼り付けて俺を呼んだ。
「おとも、だち?クラスの子、、かな?きてるわよ」
親が知らないクラスメイトももちろんいた。
「おっけ。すぐいくわ」
アコギを乱雑に置いて階段をおりた。
幸成たちか?
深く来訪者の予想せず玄関のドアを開けた。
「こんにちは。大輔」
春が来ていた。季節的な意味ではない。いや正確には春の冬?冬の春?
赤と白の比率がなんとも美しいもふもふした衣装に身を包まれてた彼女。
未来だった。
心なしか彼女の頬も赤く染まっているように感じた。
そう。天使がサンタにジョブチェンジして舞い降りたのだ。
「おう。メリークリスマス。」
舌は回るのに頭は回っていなかった。
季節外れの彼女に気を取られ、間抜けな挨拶をしてしまった。
「なんでクリスマスなの?てか久々。3年振りかな」
「3年?卒業式じゃね?
てかその格好で来たのか?寒かっただろ」
そこを気にするのかと自分でも思った。
「変かな?」
「可愛いです」
「ありがと」
告白したんだ。なんとでも言える。
彼女のクリスマス感に煽られた。
クリスマスを取り戻す。絶対に。なんとしても。
別に取られていないクリスマスを取り戻すと決意をした。
母親が狂った我が子を見守っていた。
てか見られてるんだった、、。
「彼女ちゃん?寒いだろうからはいったら?」
「彼女じゃねーよ。クラスメイト」
「始めまして。大輔くんのクラスメイトの○○未来です。突然、お邪魔だてして申し訳ございません。お話がありまして...」
上品な身振り手振りで母親に挨拶する未来。
服装とのギャップでやられる母だった。
春か冬の訪れを感じながら心地よさから昇天しそうだった。
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