4人が本棚に入れています
本棚に追加
/114ページ
どうしてだろう。
あれが……ただの化け物と断定していい存在に見えない。
なんだか哀しく、憐れみを誘うような。心の奥底の感情を揺さぶられる。
「シー、……あれは何?」
「ん?」
シーは、異形を一瞥しただけで、特に興味が湧くこともなかったようだった。ああ、あれね、とほとんど投げやりな口調で呟く。
「変身する直前だよ。」
「えっと……まだ、もう一段階、変身が残ってるってこと?」
「違う。」
「……?」
「もっとよく見て。」
どういうことだろう、と思いながらも、言われた通りに目を凝らす。
そして、気づいた。
———もう一人、いる。
見知らぬお婆さんが、異形のそばで火に手をかざしていた。
「あれは……」
「そう。お婆さんが、もうすぐ変身するよ。」
「それって、つまり……」
とある可能性に考えが行き着いて、小夜子は少し青くなった。
……まさか、あの異形の元は……
……いや…でも。
……そんなことって、本当にあるの?
シーは、そんな小夜子を黙って見つめていたが、ふいにゆっくり口を開いた。
「会いたければ、向こうへ行ってみてもいいよ。眺めることだけしか、できることはないと思うけど。」
小夜子は、少しためらった。
けれども結局は、骨の島から下りた。音だけの雨が降る泉を抜け出し、焚き火の灯りを目指して小走りに駆け寄る。
最初のコメントを投稿しよう!