レモンの海に星が光った

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どうしてだろう。 あれが……ただの化け物と断定していい存在に見えない。 なんだか哀しく、憐れみを誘うような。心の奥底の感情を揺さぶられる。 「シー、……あれは何?」 「ん?」 シーは、異形を一瞥しただけで、特に興味が湧くこともなかったようだった。ああ、あれね、とほとんど投げやりな口調で呟く。 「変身する直前だよ。」 「えっと……まだ、もう一段階、変身が残ってるってこと?」 「違う。」 「……?」 「もっとよく見て。」 どういうことだろう、と思いながらも、言われた通りに目を凝らす。 そして、気づいた。 ———もう一人、いる。 見知らぬお婆さんが、異形のそばで火に手をかざしていた。 「あれは……」 「そう。お婆さんが、もうすぐ変身するよ。」 「それって、つまり……」 とある可能性に考えが行き着いて、小夜子は少し青くなった。 ……まさか、あの異形の元は…… ……いや…でも。 ……そんなことって、本当にあるの? シーは、そんな小夜子を黙って見つめていたが、ふいにゆっくり口を開いた。 「会いたければ、向こうへ行ってみてもいいよ。眺めることだけしか、できることはないと思うけど。」 小夜子は、少しためらった。 けれども結局は、骨の島から下りた。音だけの雨が降る泉を抜け出し、焚き火の灯りを目指して小走りに駆け寄る。
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