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「景さんて、結構フレンドリーなんですね」
そう言うと、景はテーブルに頬杖をついて、こちらに体を向けてくる。
酔っているせいか、なんだか機嫌がいいみたいだ。
「……よく言われるんだよね。冷たそうとか、怖くて近寄り難いとか。修介もそう思う?」
「全然。なんだか親近感が湧きました。翔平と話してる時も、結構砕けてて、テレビとはまた違う顔だなって」
「まぁ、僕テレビのバラエティとか苦手だから、うまく自分を出せないんだよね。なんとか緊張しないようにとは思ってるんだけど、なかなか慣れなくて」
「へぇー、そうなんですか」
嬉しかった。素の彼を見ているようで。
そして、秘密を二人で共有しているかのようで。
もっと彼の事を知りたいと思った。
この会話を機に、彼は俺に色々と話してくれた。日頃の彼の仕事の事。よく行くお店。好きな音楽。何もかも新鮮で、ずっと聞いていても飽きなかった。時にはジョークも交えて、俺を笑わせてくれた。
「景さん、それ、ほんとすごいですね」
「修介さ」
取り留めのない会話をしている最中、ふと名前を呼ばれた。
「はい」
「敬語やめなよ。あと、その景さんっていうのも。なんかむず痒くて。同い年なんだから、呼び捨てでいいよ」
微笑みながらそう言われた。
いきなりそんな事を言われても、困ってしまう。
確かにこの短時間で彼に慣れたけれど、芸能人相手に急に馴れ馴れしく変えることなんてできない。
(やっぱ慣れとるなぁ芸能人はっ! こうやって気ぃ使ってどんどんファンを作ろうと必死なんやなっ!)
「あ、じゃあ……うん……」
うん、は聞こえないくらいの小さな声で言った。やっぱり変な感じ。
景は不自然な俺を見て笑って、唐突に切り出した。
「修介って彼女はいるの?」
「えっ? いや~、いない、けど……」
「ふぅん。そうなんだ。そんなに可愛いのに」
そう言って景は、俺の頭に手を伸ばして来た。
長い指が俺の髪に触れて、そのまま顔を覗き込むように凝視される。俺も少し酔ってて今まで気付かなかったけど、景と距離がものすごく近い。
すぐ目の前に景の綺麗な顔がある。
景はそのまま俺の頭を撫で、髪を梳いた。
「髪、綺麗だね。サラサラで。少し茶色っぽいけど……染めてるの?」
景の手は何往復も俺の頭の上を行ったり来たりさせた後、毛先を親指と人差し指の腹で摘んで流した。
俺は苦笑いしながら、背中にタラタラと冷や汗をかく。
「あっ……うん! 染めてる……」
その景の行動を見て、俺は再度確信する。
これだから!! イケメンは!!
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