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実は気になっていた事があったから、話すきっかけが出来てちょうど良かった。
エッチをしたあの日以来、瞬くんは何故か俺を避けるようになっていた。
……気がするだけで、本人はそんな気は無いのかもしれないけど、なんとなく態度がよそよそしくなったなと感じていた。
連絡も付き合いたての頃みたいに頻繁には来なくなったし、けれどこちらから連絡すれば、バイトで忙しいからまた連絡する、と言っておいて結局連絡が来なかったり。
結局、夏休みは殆ど一緒に遊んだり出来なかった。
今日だって、前だったら約束していなくても待っていてくれたのに、俺が引き止めていなかったら勝手に一人で帰ろうとしていたし。
「どしたの? 修介。俺バイトあんだけど」
瞬くんは面倒だと言わんばかりの態度でそのサラサラな長い前髪を右手でかきあげた。
ああ、今日も安定のカッコよさ……
と惚れ惚れしつつ、早速疑惑を追求する事にした。
「瞬くん! あのさ、俺、なんか変な噂聞いたんやけど」
「変な噂って?」
「同じクラスの奴が、瞬くんとA組の奴がキスしてるとこ見たって言うてたんやけど……」
そう言うと、瞬くんの目が少しだけ泳いだ。
それを見てこちらも動揺してしまい、思わず早口になってしまう。
「そっ、そんなん嘘に決まっとるよね? だって、俺達付きおうてるんやし……」
「あーんだよ、見られとったんか……恥ずいなぁ」
瞬くんはポケットに手を入れたまま、壁に背中をつけて首を傾げて斜め上に視線を向けた。
まるで開き直ったような態度。
「えっ! ホンマなんか?! なんで……っ?!」
次の瞬間、彼の口からとんでもない言葉が飛び出した。
「だってあいつと付き合っとるんやもん。キスぐらいするやろ」
──ん?
付き合っとる?
付き合っとるからキスぐらい言うた? 今。
「あ、あの~、瞬くん、言うてる意味がよぉ分からんのやけど……お、俺とは?」
「え? 修介とも付きおうてるよ」
「へっ?」
またしても度肝を抜かれてしまった。
これって世間的には俗に言う……
「それって、二股いう事か……?」
「え? ちげーよ。だってもう一人いるし」
俺は悶絶しながら両手で頭を抱えた。
先程から目の前の人は何を言ってるのか。
頭が悪いから理解出来ないだけなのか。
使えない脳みそをフル回転させながら、俺は瞬くんの二の腕をガシッと両手で掴んだ。
「……俺はっ! 何番?!」
ようやく出てきた言葉がこれかと、自分でも情けなくなってしまった。
瞬くんはかっこよくてモテモテなんだから、恋人だっていっぱいいて当たり前。
そんな馬鹿みたいな事を何故か必死に自分に言い聞かせた。
瞬くんは目を丸めた後に吹き出すと、余裕の表情で俺に問いかけた。
「何番って、好きなのが?」
俺はコクコクと何度も頷いた。
瞬くんはうーんと口を噤みながら、左斜め上に視線を向けた。
きっと彼の中で今三人を天秤に掛けている。
大丈夫。きっと俺が一番だ。
だって、告白した時のあの嬉しそうな顔。
俺もずっと好きだったって言ってくれた。
帰り道に手を繋いでくれた。
修介は人懐っこくて柔らかくて犬みてぇだなーって、頭を撫でてくれた事だってある。
俺が一番好きだよって言われたら、俺だけにしてって言ってみよう。
もしかしたら瞬くんだって困ってるのかもしれない。他の奴にしつこく付きまとわれて、仕方なく付き合ってあげてるのかもしれないし。
だから夏休み中、連絡取れなかったのかも。
これからは、ちゃんと瞬くんの話を聞いてあげよう。
「うーん……」
瞬くんはニンマリしながら俺と視線を合わせてこう言った。
「修介は顔可愛くて好きやけど……二番かな。エッチは三番。だってあんなんで痛がってんの、修介だけやで?」
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