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「じゃあ、どんな奴がタイプな訳?」
「どんな奴?」
翔平に訊かれて、改めて考えた。
俺ってどんな奴がタイプなんだっけ?
ビールの泡を見ながら考え込んだ。長いこと恋愛していないから、咄嗟に出てこない。
でもとりあえず、これだけは言える。
「真面目で誠実で、俺だけを見てくれて……イケメンじゃない人っ!」
「……イケメンじゃない人?」
翔平は焼き鳥に手を伸ばして、片手で串を持ちながら首を傾げた。
「て事は、俺ってイケメンって事ー?」
へへへ~と顔を赤くして嬉しそうに笑った。
もう酔いが回っているらしい。
「うん。翔平はカッコええよ。それに見た目チャラそうやし、好きにならんかった。あ、友達としては好きやけどな」
「はぁ? 俺、見た目チャラそうにみえるけど、案外しっかりしてんだよ? さとみちゃん愛してるし」
「知っとるよ。翔平はちゃんとやっとるよ」
「修介ってB専なの? なんかイケメンに恨みでもあるような言い方だね」
「うん……まぁちょっと苦い思い出が……」
俺は洗いざらい、翔平に話した。
瞬くんと付き合っていた事。エッチが痛くて衝撃的だった事。三人同時に付き合っていて、俺は二番目だった事。
話している最中、翔平の表情がコロコロ変わって面白かった。驚いたり、眉根を寄せたり、声を出して笑ったり。それが可笑しくて、お陰で深刻にならずにどんどん話を進められた。
「ふ~ん。なんかすげぇな、その瞬って奴」
「だからもう決めたんよ。あんな風に格好ええ人は絶対いろんな奴が勝手に寄ってくんねん。格好良くなくてええし、人気者や無くてもええから、ちゃんと俺だけと付きおうてくれる人がええ」
「ヘェ~……」
翔平は頬杖をついて、先程頼んだレモンサワーのグラスにマドラーを突っ込んで回しながら、カラカラと音を鳴らす氷を見つめて何か考えていた。
しばらく俺もそのグラスに視線を送っていると、急に翔平の手の動きが止まった。
「なんか、瞬がイケメンだから遊ばれたって言ってるけど、遊んでた瞬がたまたまイケメンだったって話なんじゃねーの?」
「え?」
「世の中には、イケメンでも真面目で誠実な奴なんていっぱいいるぜ?」
「ホンマ?! 俺男子校やったけど、やっぱ恰好ええ奴は自分のカッコ良さを売りにしてるっていうか……冴えない奴見下したり、調子に乗ったりしてて……」
いつでも、目立つ奴は格好良かった。
背が高くて、明るくて、自信に満ち溢れていて。
俺には無いものを沢山持っていた。
そんな人達になりたいって、憧れていた。だから瞬くんの事を好きになったのかもしれない。
「修介、本当は面喰いなんじゃない?」
「へっ?!」
「瞬って奴も、顔から入ったっしょ? 正直」
「……」
はい。その通りです。
「だから本音は、恰好良くて、自分だけを見てくれる人、でしょ?」
「そ、そうかもしれんけど、そんな奴おらんよ……カッコええ奴は嫌でもモテてしまう訳やし……」
「俺、知ってるよー? 超絶イケメンでモテまくってるけど、真面目で誠実で、フラフラしないでちゃんと一人だけ見てくれる奴」
「ええっ? そんな奴おるん?」
「うん。藤澤 景って知ってる?」
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