祝祭

1/1
前へ
/1ページ
次へ
 「俺たち、結婚しないか」  ──俺はパートナーの見月渡(みつきわたる)からそう言われ、OKを返した。あれから3ヶ月が過ぎた。    俺の住むところの地方野党議員の割合が、どうやら高くなっているらしいと知っていた。ただ、やっぱり一番大きいのは総選挙だろうか。俺も選挙では地道に野党に投票していたが、最近の総選挙でついに政権交代となり、それからは同性婚制度があっという間に決まった。  そんな感じで婚姻届を提出し、式場を選び結婚式の予約をした。同じく選択的夫婦別姓制度も決まったので、俺たちも別姓にした。あと式に誘う人だけど……親は誘えなくて、その代わりといってはなんだけど、信頼できる友人を誘った。  だがいざ式が近付いていくにつれ、俺の不安な気持ちは大きくなっていった。式が嫌ってわけじゃないと思う。不安なんだ。  親へのカミングアウトと結婚報告の際、なかなかゲイの俺を認めない親について、渡には迷惑をかけてしまった。渡のほうは高校生の頃、自分の母が病気でこの世を去り、父はその数年後自殺した。渡はしばらく姉と暮らしていて、姉へバイセクシュアルと交際をカミングアウトした後、渡は俺と同棲ということになった。  俺は、式について相談したいと、渡に思い切って伝えた。  そうして、相談は家での昼食後になった。式に親は出席しないが、主に親の件で不安になっている俺に、渡は寄り添ってくれた。正直、相談中に泣いてしまった。渡とパートナーになれて本当に良かった。    結婚式当日。着付けやヘアセットが終わり、式の始まりが近づいていく。緊張が渡にバレたのか、渡は俺の気が楽になるような言葉をずっとかけてくれた。ありがとう、渡。    俺、白井たけるは今日、見月渡と結婚式を挙げる。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加