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家族
「高志君、お疲れー!」
元の森に戻ると、お義父さんが待っていた。はい、と手のひらを出すのでハイタッチする。
「無事に終わったみたいだね」
「うん、辰の神様、高志君のこと気に入ったみたい。
素直で、知恵もある若者だ、って」
「それはよかった。どれ朝日、桶はお父さんが持ってやろう」
「ありがと……ってそれより、お父さん、杖は?
ぎっくり腰はどうしたの?」
「おっと」
「え? もしかしてフリ? もー心配したんだから!」
お義父さんが逃げ、朝日さんが追いかけていく。
――もしかして、ぎっくり腰のフリをして朝日さんと僕を二人で行かせたのは、元彼より僕のことを信頼して、むしろ二人で行かせたかったんじゃないだろうか。
「私はこの男を朝日の婿と認めました。辰の神様はどうですか。
幼い頃より朝日を見守ってきた十二支の神様として、見極めてやってください」って。
「お母さんとおいしいお昼ご飯作ったからねー!
食べたら卯の神様のお清めよろしくだよー!」
そう言って、お義父さんは意外な足の速さで逃げ去った。僕は朝日さんに追いつく。
「兎かぁ……」
思わずつぶやくと、「がんばりましょ」と朝日さんは笑った。
「もしかして、辰の神様みたいに大きかったりするの?」と聞きながら、僕は彼女の手をとって、一緒に歩き始めた。
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