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辰の神
翌朝、僕は早起きして身を清めた。いつも通り「朝日さん、おはよう」と言おうとして、口を手でふさがれる。そうだった。儀式まではしゃべってはいけないと言われていた。
朝日さんに手伝ってもらって、袴姿になった。手ぬぐいと酒瓶をお義母さんから預かり、木の手桶に入れる。
母屋から神社へ、そして本殿の前を通り過ぎ、塀に作られた扉に行き当たる。そこで朝日さんは鍵を開け、一礼して中に入った。僕も一礼して後に続く。
森の中、道が細かく枝分かれしていた。朝日さんは迷うことなく道を選んで進んでいく。やがて鳥居と、その向こうにお社が見えた。鳥居には「辰」と書かれていた。
深く一礼して、朝日さんはここでようやく声をあげた。
「本年、辰の神様のお世話を仰せつかりました、千家朝日です。こちらは婿の高志です。よろしくお願いいたします」
さらに一礼。
そして顔を上げたら、そこには龍がいた。
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