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二人の距離
「婿よ」
「はい」
「ちょいと俺の角につかまってごらんよ」
そして龍は頭を下げた。電柱ほどの太さの立派な角が、目の前に差し出される。戸惑ったが、神様の言うことには従うしかない。両腕で抱え込むようにしてつかまった。
「こうですかね?」
「もっと力を入れるんだ。大丈夫、折れやしないよ。
しっかりつかまってな」
「はぁ」
そうして神様は頭を持ち上げ――尾に向かって巨体を曲げ始めた。僕の体が宙を舞う。
「うわぁぁあ!?」
白い空間の中、ぐいーん、となすがままに運ばれる僕。
あっと言う間に尾に到着し、反動で振り落とされた。
「あいたた……」と頭を押さえる僕。
「えっ、高志くん? 大丈夫?」
龍は体で円を描くように浮いている。
「朝日や」
「は、はい」
「婿殿は心配事があるようだよ。聞いてあげな」
そして辰の神は、「あたしゃなんも聞かないからね」と言わんばかりにまた、頭を遠くに戻して行った。
僕達は顔を見合わせた。
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