正月

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正月

「きゃっ」  振り向くと、佳代がドアを開けて離れの中を覗き込んでいた。  「なにそのかっこう、びっくりするじゃないの!  サツキまで」  俺達は顔を見合わせる。二人ともゴーグルに塗装用のゴツいマスクをしている。離れの畳には新聞紙が敷かれ、これからハンドガンの塗装をしようというところだった。 「塗装なら外でやってください」 「ああ、悪い、職場じゃ換気してたから、つい」 「職場と一緒にしないでくださいよ、もう」  佳代は怒って出ていき、俺達は大人しく庭にうつることにした。寒い寒い、と子供みたいに言い合いながら道具を運ぶ。  ふと、サツキが「ねぇじいちゃん」とぽつり、つぶやいた。   「ん?」 「学校、ついてきてくれるんだよね」 「もちろん」  冬休みが明けたら、サツキはうちから近い中学校に通うことになっていた。  登下校に付き添う約束だ。学校には事情を話し、様子を見てもらうように言っている。サツキのペースで無理せず、通えたらいいなと思う。 「友達、できるかな」 「できるさ。ひょっとしたら、学校にサバゲ―友達ができるかもしれないぞ」  「ええー、それは難しくない?」  サツキは苦笑した、けれど。 「大丈夫だろ。こうやってじいちゃんとも仲良くできたんだ。  エブリスタウンには小さな奇跡がよく起こる、って言うからな」  俺はそう言い切った。  学校に行き始めたサツキに、本当にサバゲ―友達ができるのは、もう少し先の話。
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