31人が本棚に入れています
本棚に追加
正月
「きゃっ」
振り向くと、佳代がドアを開けて離れの中を覗き込んでいた。
「なにそのかっこう、びっくりするじゃないの!
サツキまで」
俺達は顔を見合わせる。二人ともゴーグルに塗装用のゴツいマスクをしている。離れの畳には新聞紙が敷かれ、これからハンドガンの塗装をしようというところだった。
「塗装なら外でやってください」
「ああ、悪い、職場じゃ換気してたから、つい」
「職場と一緒にしないでくださいよ、もう」
佳代は怒って出ていき、俺達は大人しく庭にうつることにした。寒い寒い、と子供みたいに言い合いながら道具を運ぶ。
ふと、サツキが「ねぇじいちゃん」とぽつり、つぶやいた。
「ん?」
「学校、ついてきてくれるんだよね」
「もちろん」
冬休みが明けたら、サツキはうちから近い中学校に通うことになっていた。
登下校に付き添う約束だ。学校には事情を話し、様子を見てもらうように言っている。サツキのペースで無理せず、通えたらいいなと思う。
「友達、できるかな」
「できるさ。ひょっとしたら、学校にサバゲ―友達ができるかもしれないぞ」
「ええー、それは難しくない?」
サツキは苦笑した、けれど。
「大丈夫だろ。こうやってじいちゃんとも仲良くできたんだ。
エブリスタウンには小さな奇跡がよく起こる、って言うからな」
俺はそう言い切った。
学校に行き始めたサツキに、本当にサバゲ―友達ができるのは、もう少し先の話。
最初のコメントを投稿しよう!