不登校の孫

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「実の親で手に負えないのに、俺みたいなじじいがどうこうできるわけないって、わかってたはずなのにな」  パウンドケーキを一口食べた。ところどころドライフルーツが入っていた。少ししょっぱくて、甘い。生地と合っている。 「隆行の気持ちもわかる。 俺達の時代は、学校行って、就職して、がむしゃらに働いて妻と子を養うのが当たり前だった。  親の会社を継ぐのが当然だったし、レールを外れることなんか考えたこともない。  だから孫が知らない道を行くのが心配なんだろう。わかるよ」  稔の言葉が染みる。  俺たちはまっすぐ進んできた。でも時代は変わる。昔の職場も廃工場になった。体も老いる。今の子供達と考え方に差が出てくるのも、しょうがないかもしれない。 「――俺は俺の物差しでサツキの人生を測ってたんだな。昔は俺だって、反抗期に親からどやしつけられるの嫌だったのにな……。  俺、サツキに謝るよ。サツキにはサツキのペースがあるってな。あいつが選んだ道を急かさず応援する。  話聞いてくれてありがとう、稔」 「俺はなんもしてねぇよ」と稔は茶をすすった。  湯呑を置くと同時に「ところでな」と切り出す。 「工場のことでちょっと困ったことになってるんだが……お前、警備員の仕事とか興味ないか?」
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