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結局、サバイバルゲームには最後まで鯖は出てこなかった。
それに、見ていて面白かった。
参加者は小さな白い弾を使う。実弾ではなく、土に還る素材でできているらしい。当たったら自己申告で「ヒット!」と言う。撃ち過ぎてしまった時は謝ったり、味方同士で声をかけあって連携をとったり。殺伐としていなくて、むしろスポーツに近いものだな、と理解した。
廃工場の中で生き残りをかけて打ち合うゲームや、チームに分かれて大統領役を守りながら相手方の大統領を倒しに行く「大統領戦」もあった。受付で見かけた小柄な女性はすばしっこく、腕がよかった。だがそれでいばるわけでもなく、他の参加者同様、非日常を楽しんでいる様子だった。
10時から13時まで、休憩を入れながらいろんな種類のゲームを行い、イベントはお開きになった。皆笑顔で帰っていく。
稔太もとても喜んでいた。
「いやー面白かったです! 古い機械が残っているのがいい。適度な遮蔽物になってくれるし、あたりの工場の音がカモフラージュになって動きがわからなくて面白いですね。駐車場もあるし、またここでやりたいです」
「同じ場所でやって飽きないのか」
「メンバーを変えたり、ゲーム形式を変えれば飽きないですよ。今回は知り合いしか呼びませんでしたから、父からOKが出れば、知り合いの店やネットで大々的に告知しようと思います。
隆行さん、今日は本当にありがとうございました!」
頭を下げられる。
「まあ、見ての通りのじじいだが、役に立ってよかったよ」と俺は言った。
「ちなみに、一つお願いがあるんだが……」
「なんでしょう」
「今日の参加者の受付名簿、見せてもらえるかな」
稔太はまばたきした後、
「やっぱり、バレましたか」と言った。
家に戻ると、テーブルに温めるだけの昼食が用意されていた。朝はなかったものだ。ごはんに味噌汁、肉野菜炒め、卵焼き。
サバゲーを見ていただけなのに、腹が減っていた。いつもより昼飯がうまく感じられた。
食べ終わると、俺は離れに向かった。
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