俺はフェンサー

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ユニフォームのズボンとTシャツの上に、胴体を覆うプラスチックのプロテクター。 さら利き腕側が片袖になっている布製のプロテクターとユニフォームの上衣を着用。 最後にメタルジャケットを着て、身支度を整えた健一は、フルーレ剣が2本入った剣ケースとグローブ、マスク、そしてスポーツタオルとスポーツドリンクが入ったペットボトルを持って自分が試合するピストに向かう。 コーチのベンチ入りが許されるのは、決勝トーナメントから。予選プールは自分ひとりの力で戦い抜かなければならない。 もっとも、小学生の時から、予選プールはコーチなしで試合するのが常だけれど。 ピストに上がった選手たちはまず、ボディーコードをリールに装着する。 フルーレの場合、有効面(ゆうこうめん)、すなわちメタルジャケット部分を一定の圧力で突かないと得点が入らない。 そのため、剣と判定に使う電気審判機をつなぐ必要があるからだ。 健一が、相手のメタルジャケットを突くと、ピーッ!という電子音と共に緑のランプが点灯した。 同じように、相手も健一のメタルジャケットを突く。 すると電子音と共に赤のランプが点灯した。 これで、電気審判機のチェックは完了。 「ラッサンブレ。……サリューエ」 審判のかけ声と共に、ピストの上で向かい合った選手たちは試合前の挨拶を行う。勝者が確定した後にも同様に挨拶を行い、握手をして試合終了となる。 礼に始まり礼に終わる。 それは、フェンシングが、騎士道精神を受け継ぐスポーツである故だ。 (ちなみに、審判のかけ声も含め、フェンシング用語はすべてフランス語である) 挨拶を終えた健一は、マスクをかぶり、大きく息を吸って吐く。 ……いざ、予選プール開始!
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