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魂を四つ③
床に横たわる未央の胸に手を当てると、心臓の鼓動が伝わってきた。
頬に赤みも差してきている。
秀一はひとまず安心し、肘掛け椅子に腰を下ろした。
かつて石塚幸恵だった幽霊と『怨嗟の悪魔』はいなくなり、部屋には秀一と未央の他は四つの死体——宇佐美、真海、克己、綾子——だけとなった。
椅子にもたれた秀一は、途方に暮れた。
幸恵の死に関わった四人を見つけ出して魂を奪えば、宇佐美たち四人を助けることは出来る。
だがどうやって四人の犯人を見つけ出す?
後悔してもしょうがないが、未央ではなく、幸恵の事件を調べていた宇佐美をまず生き返らせた方が良かったかもしれない……。
宇佐美は今、青白い顔で椅子に腰掛けていた。
うたた寝しているようにしか見えないが、心臓は完全に止まっている。
宇佐美の上着のポケットにスマホが入っているのが見えた。
秀一は立ち上がり、宇佐美のスマホを抜き取った。
宇佐美の手を取り、指紋でロックを解除する。
殺人事件の犯人探しなど、どうすればいいのか見当もつかない。
仕方がないので、よく知っている警察官を頼ることにした。
秀一は恋人の正語に電話をかける。
どう説明しようかと考える間もなく、正語はすぐに電話に出た。
「どうした、ウサたん。休暇中にまた事件か?」
その声を聞いた途端、秀一はすぐに電話を切った。
なにがウサたんだよ‼
いい大人が気持ち悪い‼
二人っきりの時は、そんな呼び方をしていたのかよ‼
嬉しそうな正語の声にも頭に血が上った。
怒りが収まらない秀一は、そのまま宇佐美のスマホから正語にショートメールを打った。
『しばらく仕事を休みます さようなら』
送信すると電源を切り、秀一は宇佐美の上着にスマホを戻した。
「秀ちゃん?」
呼ばれて振り返ると、起き上がった未央が目を擦っていた。
「ごめん、寝ちゃった——」
未央は椅子に座る宇佐美や綾子、ソファに並んで座る真海と克己を見回す。
「——みんな、寝てるの?」
「全員、死んでる」
未央はキョトンとしながら秀一を見つめた。
「——秀ちゃん、どうしたの?……怒ってるの?」
「警察なんか頼れない! オレたちだけで三十年前の事件の犯人を捕まえる!」
未央は立ち上がり、宇佐美の身体に手を触れて揺すった。
未央の手が震え出す。泣き出しそうな顔で他の三人のを見回す。
「……みんな、どうしちゃったの……」
「大丈夫だよ! 四人の犯人を見つければ、ここにいる全員を生き返らせることができるんだ!」
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