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魂を四つ④
宇佐美たちを助けるためには、幸恵の殺害に関わった四人の男たちの魂を持ってこなければならないが、そんな話を未央に聞かせるわけにはいかない。
秀一は魂云々のあたりは伏せて、未央にこの状況を説明した。
未央は考え込むような顔をする。
「——つまり幸恵さんの幽霊は、自分が死んだ理由が知りたいんだね」
「……だいたい、そんな感じ、かな」
秀一は下を向いた。
幸恵が人間の魂を握り潰したがってるとは言えない。
そもそも人間の魂を抜き取る術を幸恵に与えてしまったのは自分だ。
そのせいで宇佐美たちをこんな目にあわせてしまった。
「他の人に話したら宇佐美さんたちは二度と元に戻さないって、その幽霊から言われたんだね?」
秀一は更にうつむいた。
そんなこと、幸恵は言っていない。
だが宇佐美の死体を見た正語がどんな顔をするか、想像もしたくなかった。
「秀ちゃん、やろう!」
未央が両手を掴んできた。
「僕たちで三十年前の事件を解決して、みんなを助けよう!」
秀一は下を向いたままそっぽを向く。
未央と顔が合わせにくかった。
突然、聞き覚えのあるオーケストラの曲が流れた。
「『花のワルツ』だ」
未央は屍となった大人たちに近づいて耳をそばだてる。
「真海さんのバックからだ——スマホかな?」
曲が止み、男の声が聞こえた。
『真海さん、高森です。霊媒師とは会えた? 心配だから私も付き添うよ。いまそっちに向かってる。もうすぐ着くよ』
「高森さんだって」と未央は秀一を見た。「真海さんの知り合いなら、この家で起きたこと、何か知ってるかも。こっちに来るみたいだから、門の外で待ってようよ」
「わかった」と秀一は玄関に向かい歩きだしたが、ねえと未央に呼ばれて振り返った。
未央は心配そうに宇佐美たち四人の大人を見ている。
「身体って、徐々に腐っていくよね……みんな、大丈夫かな……どれくらいの時間もつの?」
そんなこときかれても、そんな知識、秀一にはなかった。
だが未央の不安は取り除きたい。
秀一はしばし考えた。
「——この部屋の時間が、止まればいいの?」
「そんなこと出来る?」
秀一は自分が身につけているものを見回した。
ハンカチもティッシュも持っていない。学ラン脱いだら寒いだろう。
しかたがないので親指にはめている青い石が付いたリングを外した。
この夏、正語から貰ったものだ。
リングに魔力を込めて部屋の中央にいる宇佐美に近づいた。
「……秀ちゃんって、魔法使い?」
「魔女」
「女なの⁉」
ジョってなんだと思いながら、秀一は宇佐美の指にリングをはめた。
自分が親指にはめていたリングは、宇佐美の薬指にぴったりのサイズだった。
——これは、何かの暗示なのか。
「……行こう」
秀一が歩きだすと未央が手をつないできた。
強く秀一の手を握ってくる。
「大丈夫だよ。僕たちだったらきっと事件を解決できるよ」
秀一は自分が泣いていることに気づいていなかった。
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