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 震えて動けないでいる僕のところへ、一歩一歩ドラゴンが近づいてくる。一瞬だけ、逃げようかと思った。けど、僕の遅い足ではすぐにドラゴンに追いつかれて祖父と同じ目にあってしまうと考えた。  そこで僕は、低い唸り声を上げて迫ってくるドラゴンに向かってフレイマゴラスを唱える覚悟を決めた。特訓の初日から祖父と一生懸命練習した炎属性の基礎魔法。僕の中で、一番上手に使える自信がある魔法だ。    ここで死ぬわけにはいかない! また学校でみんなに、そしてユウアに会うんだ! 強く、強く思った。   「フレイマゴラス!」  神経を集中させて唱える。  すると、ドラゴンの体のど真ん中に真紅の炎の球体が命中した。ドラゴンは身を屈めて苦しんでいる。  僕は、今だ! と思い、何度も呪文を唱えた。 「フレイマゴラス!」「フレイマゴラス!」「フレイマゴラス!」 ──全部命中したけど、これ以上は唱えられない。体力の限界だ。どうか立ち上がらないでくれ。  しかしドラゴンは、ゆっくりと立ち上がり、僕は絶望した。  
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