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すると、ドラゴンが「あら、上手じゃない。けっこう効いたわよ。まあ、威力は私の半分以下だけどね」と言葉を発した。
さらに、離れたところで倒れている祖父が「うむ。才能あるな」と立ち上がったものだから、僕は大混乱だ。
「じいちゃん、大丈夫なの?」
「ああ、直前にバリアを張っておいたからな」
「えっ? 一体、どういうことなの?」
「俺とヘレンの作戦だよ」
「え? わからないよ! 何?」
そこに、近づいてきたドラゴンが「もう! 理解力がないんだからぁ! リョウに自信を持ってもらうための作戦よ」と苛立たしげに言って、「フイルエクリ」と呪文を唱えると、ドラゴンが一瞬で祖母の姿になった。
「さすが変身魔法の専門家だな。ああ、この杖はな、ヘレンの杖と音のやりとりができるんだよ」
「そう! ここでのやり取りが、全部私の部屋に置いてある杖へ伝わってたってわけ。ちゃんと、ダーリンと段取りを決めておいたのよ。でもリョウ、凄いわ! 連続してフレイマゴラスを使えるようになったなんて。得意なものできたじゃない!」
「あ、確かに、フレイマゴラスなら簡単に使えそうな気がする」
「満足せずに、もっともっと向上心を持って練習するんだぞ。まだ基礎の段階なんだから。ヘレンは、リョウの何十倍も大きな炎の球体を出せるんだ。でも、自信がついただろ? 恋も、その調子でな」
「え……ああ。ありがとう。じいちゃん、ばあちゃん」
「さ、お家に帰りましょう」
三人で手を繋ぐ。
手を繋ぎながら祖父母を交互に見て、二人を将来の自分とユウアに重ねた。
明日から新学期が始まる。学校でユウアに会ったら、好きだって気持ちを伝えてみよう。自信を持って。
祖父が「アエステロフロウ」と唱えた。
家に戻ったら、[今、僕が考えていることリスト]に、もう一つ付け足さなきゃ。
・僕の祖父母は最高の夫婦だ、と。
(了)
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