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「何だか今日は元気ないな? どうしたんだ?」
朝食のパンを食べながら祖父が訊いてきた。
「そう見える? 普通だけど。元気だから問題ないよ」
嘘をついた。本当は昨日書いたリストのことを考えていて、切ない気持ちで胸がはちきれそうだ。
「隠さないでよ。今日のリョウの様子、私も変だと思う」
「だから、ばあちゃん大丈夫だって」
「いーや、俺は騙されないぞ。もしかしてアレだろ? 恋ってやつをしてるんだろ?」
祖父がミルクを一口飲んでから、からかうように言う。僕は、その口調に苛立って「もう、うるさいなあ!」と怒鳴って食べかけの朝食を残したまま台所を出て、階段をドンッドンッと音を鳴らしながら駆け上がり自分の部屋に入った。
その時の僕は、おかしかった。普段なら、ああいう風にからかわれても適当に受け流すことができるのに、強い不安感に襲われて、受け流すことができなかったのだ。
「リョウ! 一体どうしたの!」
気が付けば、祖母が部屋のドアを開けて立っていた。祖母の後ろには深刻な顔をした祖父がいる。
「私たちに言えない問題を抱えているのね?」
祖母が優しい口調で言う。
「まあ、ちょっとね」
「そう……言いたくないなら、無理して言わなくていいわ。ほら、ちょっと換気でもして気分転換したら? いい空気を吸えばリラックスして気持ちを切り替えられるんじゃない?」
祖母が部屋の中に入り、僕の顔をチラッと見ながら部屋の奥まで行って、窓を全開にした。
冷たく強い風が吹いた。カサカサッと音がする。その音を聞いて、僕は、しまった! と思った、が遅かった。
机の上に置きっぱなしだった[今、僕が考えていることリスト]が床に落ち、床の上を素早く移動し、部屋の入口にいる祖父の足元で止まったのだ。
「ん? 何だ? この紙は」と祖父が拾い上げた。
僕は、「授業で配られた資料だよ」と言ってから、すぐに「読まないで!」と叫ぶ。しかし祖父は、神妙な表情をして既に読んでいる最中だ。
僕は、ため息をついてベッドに座り込んだ。
「やっぱり恋ってやつをしてるんじゃないか。それで様子が変だったんだな」と祖父が言うと、祖母が「まあ!」と嬉しそうな声を上げた。
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