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僕は、これ以上冷たい風が入らないように窓を閉めた。
窓から見える遠くにある高い山は、両親がドラゴンに襲われて亡くなった場所だ。
「なるほど。昨晩、そんなことを妄想していたのか。でもリョウよ、これは恥ずかしいな。絶対に読まれたくなかっただろうよ。しかし……だ。この[今、僕が考えていることリスト]とやらを拝読して、じいちゃんは、これは俺の出番かな? と思ったぞ」
祖父がニヤッと笑みを浮かべる。
「どういうこと?」
何を言いたいのか、さっぱりわからない。その気持ち悪い笑みの意味は何なのだろうか?
「もうっ! 察しが悪いんだから。愛しのダーリンがリョウに魔法の猛特訓をしてくれるってことに決まってるじゃないの。要するに、あなたの望みは、成績を上げてユウアちゃんとやらと同じ学校に入学したいってことでしょう? お年頃なんだから勉強の動機は、そういうので良いのよぉ。恋を燃料にして精一杯勉学に励むのって、とっても素敵! 十四歳なら、ああいう謎めいたリストを書きたくなるときだってあるわよぉ。うーん、素晴らしき青春の匂いがプンプンするわぁ。いいじゃないのぉ」
突然、祖母が興奮状態になった。確かに祖母は、こういう話が大好物だ。そんな鼻息を荒くして興奮している祖母につられてしまったのかは定かではないけど、僕は急にワクワクした気分になってきた。
すると、祖父が「うむ。さすが愛しのヘレンだな。俺が言いたいことをすべて言ってくれた。その知性の高さを再確認して、ますます好きになったぞ。もう、これ以上好きになれないほどに……ヘレン、愛してるよ」と愛を囁き始めた。
「あら、もう! リョウ、せっかくだから、しっかりと目に焼き付けなさい!」
祖父の甘い言葉を聞いて、祖母は更に興奮状態になった。祖父母の距離が徐々に縮まっていく。
止めないと勢いでそのままキスをしそうな流れだったから、僕は全力で二人の間に立ちはだかる壁となった。
一体、何なんだ、この夫婦は。
「孫の目の前でベタベタするなぁ!」二人に挟まれながら、僕は力の限り叫んだ。
「はっ! 俺としたことが! すまなかったな、リョウよ」
「あら、私ったら! 恥じらいを忘れかけていたわ!」
……この二人の孫でいるというのは、とても疲れる。
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