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「まだ支度が終わらんのか」
「もうちょっとだから待って、じいちゃん」
冬休みが終わる直前までの間、僕と祖父は両親がドラゴンに襲われて亡くなった山の周辺にある荒野で、魔法の練習をすることになった。早朝から叩き起こされたから、まだ頭がボーっとしている。学校がある日だったら、あと二時間は寝ているのに。
祖父に急かされながら、僕は慌てて出発の準備をした。
「準備終わったよ」
「まったく遅いんだから」
「ごめんね。でも本当に大丈夫なんだよね?」
「ああ、何も心配いらないよ。あの辺りにいたドラゴンたちは、一匹残らず勇者たちによって退治されたんだから」
祖父の話によると、山の周辺にいた多くのドラゴンは両親たちを襲った直後に、隣町に滞在していた勇者たちによってあっという間に退治されたのだという。
「よし、出発だ!」
「よろしくね、じいちゃん」
「部屋でのんびりしながら待ってるわ。リョウ、無理しないでね。ダーリン、ちゃんと手加減しなさいよ」と心配して玄関先に立つ祖母に「じゃあ、頑張ってくるからね」と手を振った。
「移動魔法を使って行くか。俺の腕に掴まるんだ」
「うん」と細い右腕をしっかり掴むと、祖父が「アエステロフロウ」と呪文を唱えた。
僕たちは、一瞬にして荒野まで移動した。
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