10人が本棚に入れています
本棚に追加
荒野に到着すると、祖父は足元に転がっている小石を拾い上げて、その小石をドラゴンの人形に変化させた。その人形は、僕の体の十倍ぐらいはありそうな大きさで、迫力があり、とても怖かった。
祖父は「遠くから、この石人形目がけて魔法を放つんだ。段階を踏むごとに徐々に人形を小さくしていくからな。上手く当てろよ。よし、最初は炎属性の基礎魔法の特訓からやるぞ。離れよう」と歩き出す。
僕は、家にいるときとは全然違う祖父の雰囲気に押されて、声を出すことができなかった。
祖父が杖を掲げ、「こうやるんだ。よく見てろよ。フレイマゴラス!」と呪文を唱えた。
すると杖の先から、拳の大きさほどある真紅の炎の球体が発生して、一瞬後に球体は、ドラゴンの人形のど真ん中を貫いていた。
「元が小石だから簡単に貫くな。おい、飛んでいったの見えたか?」
僕は「まあ、なんとかね」と嘘をついて強がった。
「じゃあ、同じようにやってみろ。この魔法はもう習っただろ?」
「うん。三ヶ月前くらいに習った……けど苦手なんだよな」
「苦手かぁ。じゃあ得意な魔法は何なんだ?」
「得意な魔法はないよ。僕、魔法の成績は全科目、下から数えた方が早いから」
「まあ、あの恥ずかしいリストを書くぐらいだからな」
「それは言わないで。お願い」
こうして、『冬休みが終わるまでの間に全ての種類の基礎魔法をマスターすること』を目標に猛特訓が始まった。
最初のコメントを投稿しよう!