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デスモンドの脳裏に、アリンについてタウルンディアに行った自分の師匠のことが思い浮かんでした。
「どういうことなのでしょうか?」
街の中の偵察の報告を受けたコンラットが、デスモンドに訊いてきた。戻る偵察は皆、同様の内容をコンラットに伝えていた。路上でタウルンディア兵が倒れていると。
「これは推測にしかすぎませんが、このたびの侵攻でイザンの街に入ったタウルンディア兵の大半がゾンビ兵だったのではないかと。朝に強い浄化の魔力を感じましたので、それによってゾンビ兵だった者が動けなくなったのではないかと思われます」
とデスモンドが答えると、
「なに!ゾンビだと?」
コンラットの顔が歪んだ。倒しても倒しても起き上がるゾンビの恐ろしさは、口伝で伝えられていた。
そのとき、街の入口の辺りで火の手が上がった。
街の中で留めていた住民が逃げ出すのを抑えきれなくなったタウルンディア軍が火をかけたようだった。
「コンラット殿は早くオニール様のもとに報告を!私は消火に参る」
デスモンドはそう言うと、石畳を駆けた。煙の方向に行くとすでに辺り一帯の家屋が炎に包まれている。
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