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「…いかにも。本当に、彼らと会話しておるわ」
そう言うと大熊は、ワハハハと笑った。呆気にとられるデスモンドに頓着せずに、大熊は言った。
「この付近の森の精霊から、自分たちと会話する人間がいると聞いてな。珍しいので、見に来たのだよ。ずいぶんとお前さんに懐いているようだ」
熊の表情は分からないが、きっと微笑んでいるに違いない口調だった。
「精霊が許すのなら、いくらでも森の恵みを持ってゆけばよい。邪魔したな」
と、大熊はそう言うと踵を返して、森の奥に消えていった。
これが、デスモンドとグレンの最初の出会いだった。
それ以来、デスモンドが森に入ると遠くからその大熊が見ていることが度々あった。しかしその大熊は、デスモンドに何か干渉するわけでもなかったので、彼は放っておいて自分の仕事に専念していた。
彼の仕事は、薬草摘みだった。森の奥に入って薬草を摘んでは薬師の家に持ってゆき、買い取ってもらうのだ。
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