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(これが、あのザカライア?)
体力がなくて城から遠出をしたことのない彼は、旅をするオニールを羨望の眼差しで見つめつつ、興奮気味にオニールの体験談を聞き、笑い、そして自国への思いを語っていた。
彼は、病弱な自分を支えてくれた両親、親戚、領民に、いつか恩を返したいと言っていた。
オニールの脳裏に、会うたびに弟のように自分を慕ってくれたザカライアの笑顔があった。その彼が自分に刃を向けることが、現実とは思えなかった。
タウルンディアがシアランディアに侵攻してきて、自ら軍を率いて敵として対峙していながら、オニールは心のどこかで、再び繋がりを結び直せるのではないかと思っていた。
しかし、見た目も振る舞いも変わってしまったザカライア。彼の振り抜く剣に、情けは一欠片も入っていなかった。目の前のザカライアは、オニールを殺すことしか考えていなかった。
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