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仕事終わったら一階で待ってる。 佐渡と連絡先を交換し初めて彼から届いたメッセージに顔が綻ぶ。 先生の名前が表示されるの新鮮だな。 嬉しい。 気づけば、2人とも連絡先さえ交換するのが初めてで何だかふわふわとした気持ちになった。 自分の携帯を眺めて心が温かくなる。 勇気を出して気持ちを伝えて良かった。 あの時、姉が背中を押してくれたような気がして華はそっと胸の中で「ありがとう」と呟いた。 「お疲れ様でした。」 定時で仕事を終わらせて一階へ向かう。 いつもは憂鬱なエレベーターも今日は嫌じゃない。 ポ〜ン。 一階についた音と共に箱から降りる。 視線の先に佐渡がいるのを見つけ嬉しい気持ちになる。だが、その横に女性がいるのが目に入り思わずフロアの隅に体を隠す。 大きな観葉植物に身を隠しジッと身を固める。 「佐渡部長、ダメですか?他の営業のメンバーも来るんです。ぜひ、部長にも来て欲しいです。 皆、部長に話聞きたいって言ってましたよ」 女性はかなり近い距離で佐渡に詰め寄っている。 「申し訳ないけど、今日は予定あるんだ。 また今度。」 佐渡は女性と距離を取り断りの謝罪をしている。 「え〜その予定、キャンセルできないですか? 皆に部長連れてくるように言われてきたんですよ。。。」 女性はあからさまに落ち込んだ様子で佐渡の顔を伺っている。 職場の飲み会なら仕方ないよね。 周りと意見交換するのも大事な事だ。 華は今日は用事が入ったと連絡を入れようと携帯を手にする。 先生の邪魔にはなりたくないもの。 華が文字を打とうと画面をタップしようとした時、佐渡の声が聞こえてきた。 「今日の予定は絶対キャンセルしたくないんだ。長い間、ずっと待って、やっと思いが通じた大切な予定なんだ。皆には申し訳ないけど」 「分かりました。」女性は納得いかない様子だが、佐渡の態度に諦めたようで「お疲れ様でした」と去って行った。 華は顔に一気に熱が溜まるのをジワジワ感じていた。 先生ってあんな事サラッと言う人だったんだ。 ひゃ〜っ! 1人手のひらで頬に手を当て、悶絶する。 「こらっ。盗み聞きはダメだぞ」 後から声がし華は振り返る。 優しい笑みを浮かべた佐渡が、そのまま華の手を取り繋いで歩く。 「えっ、佐渡部長、手。ここ会社ですよ」 「分かってる。分かってるけど、ずっと繋いで歩きたかったんだよ。昔みたいに」 昔みたいに。 彼も思い出してくれていたのだ。 家までの時間、2人手を繋いで歩いた事を。 先生。 華は強く手を握り返す。 佐渡がそれに気づき、華の方を見て 嬉しそうに微笑む。 先生 大好き 華は心から笑う。 そんな華の顔を見て佐渡はギュッと手に力を込めた。 そんな仲睦まじい2人の様子を見ていた人達の「あの2人付き合ってるんじゃない?」という噂話はその日のうちに会社中を駆け巡った。
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