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目の前には、山下と何故か橋田さんが並び華を真正面から見ている。 社長含めて今日は1年間のお疲れ様会だ。 所謂、秘書課の忘年会。 そこに、いつもは参加しない社長の向上まで珍しく来ていて華やかな顔ぶれとなっている。 「で?」 橋田がワインを片手に華に問いかける。 すでにビール2杯に白ワイン1杯。 今はローストビーフを摘みつつ赤ワインを嗜んでいる橋田の顔は真っ赤だ。 「あの、橋田さんお水飲みます?お顔が真っ赤ですよ」 「は?水?私は恋バナを欲してるわけ。 つまり潤いね。水じゃないわよ。心の潤いね」 いつも早口な彼女だが、今日は特別早すぎる。 「えっと、何の話、、、」 「だから、お前と佐渡部長の事だろ? あっという間に会社全体が知る事になってんだけど」 それは華も疑問なのだ。 いつの間にか会社の人達の知る事になり 意味ありげに見られたり 少し睨まれたり 色んな視線に晒されるようになった。 前の華なら気持ちが落ちるところだが 今は側に佐渡がいてくれる。 それだけで、気持ちの均等がとれる。 つまり、彼がいるだけで幸せなのだ。 「前畑、今、部長の事考えてるだろ」 山下がコツっと軽く華にデコピンする。 「え?考えてないよ?」 「いや、お前、顔にめっちゃ出るじゃん。」 「本当、ニコニコいやニヤニヤしちゃって嫌だわ。肌もピカピカで潤いすぎじゃない?」 橋田が華の頬をムニっと摘む。 「で、前畑いつ?」 「ん?いつって?」 華は意味が分からずに頭を傾げる。 「山下、たぶん来年の春だぞ」 いつの間にか向上が話に入ってきて華を見て微笑んでいる。 「え?春?早くないですか? 社長スケジュール調整大丈夫です?」 山下が向上に身を乗り出して聞いている。 「ハハっ。事前にね、佐渡君から聞いてたから大丈夫。やはり営業課のエースはやる事も早いし段取りが完璧。」 「あぁ〜やっぱり抜け目ないですね、あの人。 たぶん分かってやってんだろうな。って所あるし、うん。前畑おめでとう」 「おめでとう前畑」 「おめでとう」 山下、橋田、向上の順に祝福を述べられ華は益々意味が分からない。 え? 何のおめでとうなの? 先生と付き合って。の事じゃないよね、、、。 「何?何?何の話ですか〜?」 ほどよく酔っ払った田上の問いかけには誰も反応せず、その他のメンバーはずっと華を見てニヤニヤしている。 華は居心地悪くなりビールを口に含みその場を誤魔化した。
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