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毎日がキラキラと色づき眩しい。 あの日から始まった佐渡との日々は穏やかに ゆったりと過ぎて行く。 と、この日までは思っていた。 「華、行きたい場所あるんだ」 彼の車に乗り込み目的地へ向かう。 景色を見ながら華はどこへ行くのか分かり運転席の佐渡の方を見つめた。 「華と一緒に会いに行こうって決めてたから」 佐渡はそう言って華の手を握った。 姉が眠る墓所は高台にあり遠くには海が見える場所だ。 12月ももうすぐ終わりを告げる。 いつもは冷たい冬の風が、冬晴れの空の影響からか今日は少し和らいでいるようだ。 佐渡と2人手を繋ぎ長い階段を登った。 佐渡が花束を墓所にたむけ、2人静かに手を合わせた。 華は姉に語りかける。 お姉ちゃん。 私、精一杯生きる。 だから見守っててね。 華は目をそっと開き横に並ぶ佐渡を見上げる。 彼は深く目を閉じてまだ姉に語りかけているようだ。 「華」 佐渡が華を見つめて告げる。 「華、俺と結婚して欲しい。 俺は華と一緒に生きていきたい。 彩さんにも誓った。 絶対に君を幸せにするから許して欲しいって」 華は姉の墓を見つめる。 目には涙が溢れてきて止められない。 お姉ちゃん。 私、幸せになってもいい? その時、柔らかい温かな風が華の頬を撫でて スッと消えて行った。 華、幸せにね。 そんな姉の声が聞こえてきたような気がした。 華は佐渡の方を向き泣きながら笑顔で答える。 「先生、ずっと一緒にいて」 佐渡は頷き華を抱きしめる。 「華、一緒に幸せになろう。」 佐渡に抱きしめられたまま、華は深く頷いた。
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