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それからしばらくして、彼の言っていたことが本当だと気づいた。
三十代になっても見た目が変わらず、どんなに自分を傷つけても死ぬことはない。
痛覚や衝撃があってもそれが直結して死につながることはない。
この異変に気づかない人間がいるという幸いなことは起こらなかった。
私がどれだけ怪我をしても、どれだけ傷つけられても次の日には何事もなかったかのように生きている。
それが人々を恐怖に追いやった。
父親や母親ですら恐怖を覚え、私に近寄らなくなった。
町の人間も同じだ。
私が何かに取り憑かれたと噂するようになり、誰も私に声をかけない。
ただ一人を除いて。
「ライラ! こんなところにいたのね」
崖の上に立つ私を追いかけてきたのは親友のアリーナだった。
アリーナは私に起きた全てを話しても身を引かなかった。
そのせいでアリーナ自身が酷い目に遭っているのを私は見て見ぬふりをしていた。
「また自分を傷つけて。寿命までまだまだあるんだから、もう少しゆっくりしたら? 町の連中は相手にしなくていいのよ。それに本当に不老不死だとしたら、あなたの痛みは消えることはない。だからもう自分を傷つけるのは……」
「やめて」
まただ。
私はアリーナにさえ、壁を作っている。
アリーナは日に日に傷が増えている。
きっと夫のダンのせいだろう。
あいつは暴力で有名だった。
アリーナは優しいところがあると言っていたけれど、アリーナに増えている傷はどれも他人からの仕業としか思えない。
それでも私はここから離れられなかった。
アリーナが私にとって最後の希望だったから。
それなのに、この日だけは心にもない言葉を言った。
「不老不死の呪いを突然かけられて、人々から恐れられて、それなのにまだ生きていろっていうの? 私はあの男の思う壺。毎日、あの男を憎んでいる。思い出さない日はない。結婚どころか本来の家族にだって見放された。それなのに、どうして生きていなくちゃいけないのよ」
「ライラ……」
完全に八つ当たりだった。
それでももう誰かに当たらずにはいられなかった。
それが親友で、唯一私から離れないでいてくれたかけがえのない人だったのに。
「もう、構うのはやめて。辛いのよ。みんなが日に日に歳をとって行く姿や、家庭を築いていく姿を見るのも。私を畏怖の対象として見ている目も」
それだけ言い残して私は山奥に走り去った。
アリーナが必死に声を出して私を呼び止めていたのに。
軽くなったこの体は身体能力までも向上させた。
誰もついてこられないスピードだ。
でもこの後私は一生後悔することになった。
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