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畏怖の呪い。
二十歳になった今日。
私のお見合いがなくなった。
最後の婚期だった。
この町では二十歳までに結婚するのが普通のこと。
その普通に私はなれなかった。
「あなたのような人の隣にはいたくない。隣にいると惨めに感じるのです」
そう言って男は去っていった。
みんなそうだった。
私は十五の時からお見合いをしていた。
この五年間、誰も私の隣に居たくないと言った。
その理由はただ一つ。
私の姿だ。
私の母は町のマドンナで、父はそこに突如として現れた一人の旅人。
二人とも誰もが羨む美男美女で、その娘が生まれた時、誰もが羨む美女に育つだろうと言われてきた。
そしてその期待に応えたかのように私は顔も良く、スタイルも良く育った。
小さい頃は羨ましがられ、男の子にも人気だった。
だけどそれが裏目に出た。
「こんな美貌を持っていたらきっと裏切られる」
「きっと夜に男狩りをしているに違いない」
「隣にいると自分が汚く見えてくる」
そんなさまざまな意見の中、お見合いをする年齢になっていざ最初のお見合いがきた。
その男性は町一番のナルシストだった。
好都合だと思った。
自分に自信がある人ほど、私を普通に見てくれる。
だけど現実なのか、最悪のおとぎ話なのかそう簡単にいかなかった。
「自分に自信がなくなった。君と並ぶと疲れる」
そう言って彼は町を出て行った。
それからというもの噂や憶測が行き交った。
そのせいで全てのお見合いが破断していった。
お見合いが破断していき、家族の仲は最悪。
父親にも母親にも愛でられることはなかった。
唯一の心の支えはアリーナという親友だった。
「ライラ、また破断したんだって? いっそのこと独身貫いてやれば?」
川辺に座り、足を浸けていると私の名前を突如として呼んで隣に座ってくるアリーナはいつも通りだった。
「また同じことを言われたよ。これでもう二十回目。記念すべき年齢=破断した回数だ」
「ライラは綺麗だからね。女の子も妬んでる。そして男にも信用されない」
「慰めに来たのか、傷つけに来たのかはっきりして」
彼女は可愛らしい笑みを見せた。
それは彼女の優しさだと知っていたから私はいつも通り、川に視線を戻して話を続けた。
「私の容姿ってそんなに羨まれるものなの?」
「皮肉ですかな? まあ、そうだろうね。綺麗な顔に、くびれ、細い腕や脚に、大きい胸」
「最後のいらなくない? あっても邪魔だし」
「それが皮肉なんだよ」
アリーナはいつも本音を言ってくれる。
だから接しやすかった。
いつもこんな調子で私の話を最後まで聞いてくれた。
でもそんな不幸中の幸いも終わりを告げることになる。
大魔法使いヒースに出会ってしまったことによって……
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