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アニカがウルフの病室に着いた時も、彼は再び気を失って以来まだ目覚めていなかった。アニカの父が帰宅する夕食時間前にアニカが家に帰っていれば父に見舞いのことはばれない。アニカはそれまではウルフのそばに付いていてあげたかった。
ウルフは中々目覚めなかった。刻一刻と帰宅時間が近づいてきたが、アニカはあともうちょっと、あと1分とずるずると滞在時間を延ばしていた。流石にもう帰らなくちゃと後ろ髪を引かれる思いで椅子から立ち上がろうとした時、ウルフの瞼がふるふると動いた。
「ウルフ!」
「ア…アンネ?毒を飲んじゃったんじゃ…?!」
「えっ?アンネって?!」
アニカは目を見開いてウルフに問い詰めた。ウルフは、アニカの叫び声でようやくぼうっとしていた頭がすっきりしたみたいだった。
「いや、し、知らないよ、会ったこともないし!」
ウルフは浮気をしたと責められているように感じて必死に弁解した。
「何言い訳してるの?浮気なんて心配してないよ、信頼してるからね!」
「アニカ!」
ウルフは感極まってアニカに抱き着こうとしたが、ギプスで固められた手足が邪魔で上半身を寝台から少し浮かせるのが精一杯だった。アニカはウルフの身体を支えて寝台に横たわらせた。
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