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アニカが目を白黒しているうちに俺は骨折していないほうの左腕でアニカを抱き寄せた。
「ウルフっ!ちょ、ちょっと!」
「まだキスしたことなかったよね。今、してもいい?」
俺はアニカの耳元で囁いた。アニカの顔はわかりやすく真っ赤になっている。
「だっ、だめっ!」
「アニカの口は嘘つきだなぁ。顔はキスしてって言ってるよ」
俺はアニカの唇に人差し指をぷにっと押し付けた。ああっ、なんて柔らかいんだ!
「ふふっ、俺のアニカ、かわいい!」
アニカが頭のてっぺんまで真っ赤になっていっぱいいっぱいになってる隙に唇にちゅっとキスした。ああっ!かわいいアニカとキス!なんて甘いんだっ!
「アニカ、そんな蕩けた顔、他の男に見せちゃだめだよ!」
「わわわっ!」
アニカはパニクって俺の腕をほどいて立ち上がってそのまま部屋を出て行こうとする。でも俺は左手で咄嗟にアニカの腕を掴んだ。
「どうして逃げるの?俺達、愛し合ってる恋人同士だろう?」
アニカは俺の手を振りほどいて出て行く。俺はその背中に叫んだ。
「逃げても無駄だよ、どこまでも追いかけて行くからね!」
俺はヘタレウルフを返上した。アニカが逃げる度に『愛してる』と『俺達は幸せになれる』を繰り返した。
まるで鬼ごっこみたいだった。でもこの『鬼ごっこ』はアニカの負けって決まっていた。最初は俺に不安がっていたアニカは洗脳され――いや、考えを改めた。アニカは俺に捕まえられた!
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