5123人が本棚に入れています
本棚に追加
だからこそ、専務に懐くんじゃないかなと個人的には見ていて思ったりもする。御曹司としての重圧や仕事の悩みを聞いてくれる父親くらいの年の信頼出来る人が彼にとってはきっと日傘専務に違いない。
廊下を歩いていたら、声をかけられた。振り向くと伸吾がいた。
「菜々。お前、今日もどうせ残業なんだろ?」
「うん……多分、八時はすぎると思う」
「お前、本当に可愛くないよな。今日は一ヶ月ぶりだぞ。もういい。俺は他の友達と飲みに行く。お前はキャンセル」
私はびっくりして彼を見た。半年位前に口説かれて付き合いはじめた。いつもなら彼は行きつけのバーで飲んで待っている。でも……。
「わかった」
すぐに通り過ぎる。すると右腕を引かれ彼にキスされた。びっくりした。こんなところでする?この人やっぱりおかしい。
「な、何するのよ!」
「じゃあな。これくらいしないと腹の虫が収まらねえよ」
きびすを返していなくなる彼の後ろ姿を睨んだ。とても口のうまい人。秘書課はそういう人が多いけれど、彼もその代表格だと付き合いだしてから気がついた。後悔しても遅い。
* * * *
最初のコメントを投稿しよう!