御曹司と上司

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 崇さんが声を上げた。私はとにかくすぐにこの場を去った方がいいだろうと思った。 「……失礼します」  私はコーヒーを専務の前にも置いて、二人に礼をすると部屋を後にした。  一体どうしたんだろう?いつもの和やかな感じがみじんもない。  出発前の緊張感が彼を包んでいたのは入る前から気づいてはいた。いつも私のこともいじるのに、それもなかったからだ。  そしてその後一時間以上部屋にこもりきりだった。彼が留守の間のことを話し合っていたのかもしれない。  ようやく挨拶をして部屋を出てきた崇さんは、私の顔をじっと見ている。 「香月はさ、俺がいなくなったら寂しい?」  びっくりした。元のお茶目な彼に戻ったのかな? 「そうですねえ、お顔がしばらく見られなくなるのは寂しいですね」 「香月……君にあちらから戻ったら頼みたいことがあるから、そのつもりでいて欲しい」  頼みたいこと?何だろう。とにかくじっとこちらを見ているし、わからないけど返事をする。 「はい、わかりました。お気をつけて行ってきて下さい」 「ああ、お前も元気でな」
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