御曹司と上司

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 秘書は知らぬフリを通している。怖くて情報収集もできないくらい、今年は状況が良くない。私は居心地が悪くて、ほとんど秘書室で過ごさなくなっていた。  四階に用事があって久しぶりに降りた。懐かしいフロアだ。 「あ、いたいた。武田課長さま」  スポーツ刈りの日焼けした顔をこちらに見せた。彼は真紀の交際相手。つまり親友の彼氏なので私も親しい間柄だ。 「……珍しいな。どうしたんだこんな所に来て?」 「それはもちろん武田課長さまにお願いがあって来たのよ」 「何だそりゃ?」 「総会の前のお手伝いをお願いしたいなー、なんて……」 「おいおい、それなら真紀に断ったぞ」 「さっき、うちの専務理事を訪ねてきた総務の金井課長に武田君を設営準備に誘うよう言われたの」  金井課長も実は同期。 「お前ら、結託してなんなんだよ」 「まあ、いいじゃないの。金井君も総務の男性だけじゃ無理だから、力持ちでスポーツマンの武田君に頼みたいってさ」 「金井の奴め。まったくもう、わかったよ。うちの若いのも連れて前日の夕方に上の階に行けばいいんだな」
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