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「素晴らしい!さすが武田課長様さま。真紀がベタ惚れするだけのことはあるわね」
私は拍手をしてきびすを返した。すると、彼が声をかけてきた。
「おい、香月。専務理事大丈夫なのか?常務連中が結託してるって噂がこの間……」
私は彼の口に手を当てた。彼はびっくりしているが、しょうがない。
「しーっ!そんなこと口にしたらダメだよ。誰が聞いてるかわかんないんだから。武田君だって課長なんだよ。自分の為にも気をつけて」
「……ああ、お前は相変わらず人のことばっかり心配して、自分は大丈夫なのかよ……真紀に聞いたぞ。お前、秘書課のやつに目を付けられて嫌みを言われてるらしいじゃないか。御曹司がいなくなってからだろ」
「ありがとう。なるようになるよ。何かするなんてできないし、もう諦めた」
「おい、何かあれば相談に乗るぞ。無理すんなよ」
「うん。ありがと」
四階の人達にも空気感が伝わっている。武田君が耳にするくらい、日傘専務が大変な状況なんだとわかってきた。
最近は他の役員が全然訪ねてこない。日傘専務も訪ねていかない。自分から何とかしようという気持ちもないんだろう。
専務は辞めるつもりなんだろうと最近見ていて思う。このままだと私はどうなるの?他の人の秘書をするためにここへ残るなんてまっぴらだと思った。
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