御曹司と上司

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 最初から秘書室勤務の女性達は生粋のお嬢様もいるし、私のような最初実務担当だった普通の人間とあまり相容れない。  ここへきたときは誰と話したらいいのかわからず、孤立した。正直鬱になるかと思ったくらいだ。真紀が来てくれて楽になった。 「それがね……急に崇さんから専務にお会いしたいと連絡があってスケジュール変更したんだ。これからお見えになるの」  崇さんとは、榊原崇さん。この榊原財閥の御曹司で総帥の長男だ。   「え、またあ?御曹司困った人だね。じゃあ大変だ。頑張ってね」 「ありがとう」  私は両手でファイルを抱えて、すぐに部屋へ戻るため歩き出した。すると、手が急に軽くなって視界が開けた。目の前で大きな目の鼻筋の通ったイケメンがファイルを二冊抱えてくれている。崇さんだ。 「おいおい、力持ちは結構だが、こんなに抱えて歩いていたら前が見えないからぶつかるだろ。危ないじゃないか」 「……あ、すみません」  一見してわかる辺りを払うようなオーラ。三十六歳になった彼は、そろそろ財閥御曹司として仕事を半分くらいお父様から引き継ぎ始めている。
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