御曹司と上司

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「あ、特に違う入れ方をしているわけではないのですけど……」 「だとしたらそれはぼくへの()だね、香月君。君の僕への愛情がこの美味しさを生んでるんだよ」 「そうかもしれませんね、専務」  私達がいつものようににっこりとふざけながら話すと、むっとした崇さんが専務に言った。 「専務は奥様命じゃないですか。あんなにお美しい奥様がいて、会社では香月にも()()とかいけないでしょ」 「……ぷっ!」  私はついおかしくてお盆を顔に当てて笑ってしまった。冗談に決まってるじゃないの。専務と私はこうやって毎日つまらない役員フロアを楽しくするため努力しているのだ。 「崇君は可哀想だねえ。プライベートも愛する人が側にいない、会社の秘書も辰巳君だしね。しかも彼と変な噂になったりして。いやあ、気の毒だ」 「……あはは」  私はついおかしくなって笑い出してしまった。お盆で顔を隠して口を押さえていたが、崇さんがジロッと睨んでる。まずい。 「どうして辰巳とあんな噂になるのか訳がわかりません。辰巳も、僕も、女性しか好きじゃない。辰巳の好きな人は香月がよく知っているらしいですよ」
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