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私の名前は、渡辺真華倫。ごく一般家庭の女子高生だ。
因みに我が家の家庭環境は、決して悪い方では無い。むしろいい方だと自分では思っている。
お父さんとママは仲が良くて、よく買い物とかも行っている。たまに二人でデートと言っては、一緒に映画等を見てくるくらいに、仲がいい。
しかし、私は最近その両親にはあるモノが無いことに気が付いたのだ。そう、それとは『結婚指輪』だ。
大体何処の家の両親も、結婚指輪をはめている。
うちの両親が金属アレルギーと言った話は聞いたことがないので、指輪をしていないのだとするならば、何かしらの理由があるに違いないと私は考えた。そこで、たまたま明日結婚記念だと言う両親に、指輪をしていない理由について聞いてみる事にした。
「ねぇねぇ、ママ。なんでママ達は、結婚指輪をしていないの?」
私からの質問が、唐突すぎたのか、ママは目をパチクリとさせて私の顔を見た。
一瞬、間があったものの、ママは「あぁ、それね……それは……」と言いながら話を濁した。
私は、何か重大な問題が? と危惧したが、すぐさま横で新聞を読んでいたお父さんが「こら、マカロンをからかうな。心配するだろう」と、ママの冗談である事を教えてくれた。
では、真相はどうなのか? 話してくれそうなお父さんに聞いてみる事にした。
「お父さん、じゃぁ、なんでウチは結婚指輪をしていないの?」
「なんでって、そりゃぁ、家族でクライミングをしてたからかな?」
「クライミング?」
そう、あれは私がまだ小学生低学年のころ、家族ぐるみの付き合いと言うやつで、幼馴染である安田明とクライミングジムに行っていた。
あの頃は頻繁にジムに通っており、毎週の様にメイの家族とジムに行っていたのを思い出した。
私は家族が行かなくなってからは、クライミングを止めてしまったが、メイはその後も続けて、今ではジュニアユースに選抜される程までなっている。
それはともかく、クライミングと結婚指輪になんの関係があるのだろう? 私はその理由をお父さんに尋ねてみると、意外と大した理由でないことが判明した。
「指輪をしない理由? あぁ、クライミングって、ホールドって石を掴んでどんどん上に登るだろう。しかし、指輪をしていると、カツンカツンとホールドに当たって傷つくんだよ。そこで、クライミングに行く都度指輪を外していたら、面倒になってしまって、そのままってな訳だ」
「ってことは、家に指輪はあるの?」
私は見た記憶の無い指輪を見たいと思い、尋ねてみた。
「あるよ。見るか?」
そういうと、お父さんは自分の部屋から同じ形をした指輪を2つ持って来た。
すると、ママは指輪を持って来たお父さんに近づいた。
「あらぁ、懐かしい。まだ入るかしら」
そう言ってママは薬指に直径が小さいほうの指輪を差し込んだ。
……しかし……入らない。
「これ私のじゃないわね」
そう言ってアッサリと諦めて今度は、直径の大きい方の指輪を差し込んだ。すると、今度はピッタリと収まった。
「こっちが私の指輪ね。貴方の指輪は小さい方ね」
それを見ていた、お父さんが「……そんな訳ないだろう。お前が太っただけだ」とツッコミを入れるモノの、ママは動じない。
「そんな事無いわよ。この小さい指輪小指にはめてみて。……ほぉらピッタリ」
「ピッタリじゃない! 薬指とピンキーリングで結婚式を挙げたか?」
「違ったかしら?」
流石はうちのママ。お父さんに一歩も引かない。
しかし、夫婦仲がいい事は、良き事かな。
そんな事を考えた休日の出来事だった。
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